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「西郷隆盛と能登新の鮭料理」について会報誌「なじらね」と新潟日報に掲載されました。

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新潟日報(2015年12月7日号)と集友会・上越オーナーズクラブ会報「なじらね」(平成30年1月1日発行号)の「幕末維新グルメ物語」に西郷隆盛と能登新の鮭料理について掲載されました。
以下になじらね掲載号の全文を掲載します。

鮭料理の名料亭「能登新」

 新潟県最北の町・村上といえば、鮭である。面川の鮭は江戸時代、村上藩の財政を大いに支えたのみならず、維新後には失業となった旧藩士たちの生活をも助けた。
村上ではこの大切な鮭を、断じて無駄にすることはなく、皮から内臓、骨に至るまで、何―つ捨てることはしない。それは長きにわたる村上の人々の、鮭に対する感謝と真心であった。よって当地には、古くからの知恵と工夫に基づいた鮭料理が数々伝えられており、新潟士産としても有名な「鮭びたし」を筆頭に、その種類は百を越えるという。
 そんな村上の歴史が詰め込まれた鮭料理を提供し続けている老舗料亭が能登新だ。
 能登新を創業した山貝家は、そもそも油屋を経営していた。料理屋をはじめたのは四代・山貝新助の時代で、徳川十代将軍·家治の治めた安永年間にあたる。
 屋号の「能登新」は、先祖が加賀の能登からやって来たことに由来しており、当時は安良町の光済寺の裏手で営業されていた。

西郷隆盛に提供された「能登新」のなわた汁

 実は能登新には幕末維新に関わる非常に興味深い話が伝えられている。それも来年の大河ドラマの主人公・西郷隆盛に関する逸話だ。
 現在、能登新の料理長を務める十一代・山貝誠さんによると、北越戦争の最中、官軍の西郷が村上を訪れておりその際に能登新が鮭料理を提供したというのだ。
西郷が北越戦争時、村上にいたという事も驚きだが、能登新に伝わる逸話はさらに面白い。
隣家に宿泊した西郷に、なわた、つまり内蔵を使った鮭料理を提供したところ、西郷の側近らが「武士に魚のはらわたを食わすとは何事か!」と激怒してしまった。あわてて謝罪に現れた女将に「女、子どもを斬る刀は持ちもうさん」と西郷は笑って許したという。
 記録によると西郷は慶応四年(一八六八)八月十一日に新潟港に入港し、その後、松ヶ崎に布陣している。そして翌月九日には米沢に向けて出発しているが、その間の動きはあいにく判然としていない。というのも、西郷は薩摩藩の国父・島津久光より「あくまでも薩摩軍の一将」としての行動を厳命されており、本営があった新発田には決して入らなかった。江戸束征時、征討大総督の主席参謀を務めた西郷に対する、久光の嫉妬と悪感がそうさせたのである。こうした事情もあってか、当時の西郷の行動はよく分かつていないのだ。
 では実際、西郷は村上にまで足を運んだのであろうか。松ヶ崎から村上まで、距離にして約五十キロ。村上城は既に八月の半ばに官軍が占拠していたので、その可能性は否定できない。
 また山口重松の著書『我が郷土村上を語る』には次のようにある。
〜西郷隆盛は湾頭に来なかったという者もあれば、悔かにやって来た、小国町医師本間立玄力が其の宿であったともいう。現に本間医師方には西郷吉之助の揮竜した書が、数通蔵されているところを見ると事実であろう〜
 能登新が安良町の光済寺衷手で経営していた際、その隣は医師·本間立玄の屋敷があり、確かに現在も当地では「本間医院」が経営されている。実は「本間医院」から程近い、村上茶の名店「九重園」にも当時、薩摩軍が訪れた逸話がある。
 また同書には、羽ヶ榎の松原路を西郷が乗った駕籠が通ったという話や西郷の宿所では犬を打ち殺して、煮て喰っていたというので、官軍とは狼の如くに、畏れられたとある。もっとも、兵糧に困っていない西郷らが、まして溺愛する犬を殺して喰うとは考えられないが、それ程に当時の官軍は怖れられていたのであろう。
 さらに「荒川町(現・村上市)郷土史」にも西郷が村上を訪れた記述がある。
〜(西郷は)十一日には新潟に来て居り、村上への途中金屋村の金左エ門方で昼食。村上では小国町養玄方に宿泊の記録があるという〜
 これらの資料に加え、能登新に伝わる逸話から考えると、西郷が村上に入ったことは間違いないであろう。そういった意味からも能登新は、伝統的な鮭料理のみならず、貴重な幕末史の知られざる側面をも伝える史跡ともいえる。

継承される「不易流行」の精神

 現在の能登新では、鮭料理はもちろん、全国にも知られた村上牛を中心に、厳選された素材と伝統の技術による数々の料理が提供されている。
 元禄二年(一六九八)、「奥の細道」の旅で村上を訪れた松尾芭蕉の言葉に「不易流行」という理念がある。「不易」、つまり永遠に変わらない伝統や芸術の精神と、時代と共に変化する「流行」。この相反する概念が結合することにより、常に新しい創出を心がけつつ、なおも風尚を保つ。
 能登新ではこの「不易流行」の精神の下、老舗としての守るべきものと、常に新しき良いものを取り入れながら、その歴史を紡ぎ続けている。


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